湖、森、サウナだけでなく、フィンランドの魅力はまだまだいっぱいあります。
縦に長いフィンランドで、都市が集中する南部と北部では全くと言っていいほど、異なった文化が存在しています。
前回までは主に南部を紹介してきましたが、今回は北部を旅してみましょう。
フィンランドの北部、サンタクロースが住んでいることでも有名なロヴァニエミという町には、北極線があります。
その境界線より北の、ロシア、フィンランド、スウェーデン、ノルウェーの4カ国にまたがる北極圏地域には、ヨーロッパ唯一の先住民族である、“サーミ”と呼ばれる人々が暮らしています。
サーミの先祖は、遡ること約11,000年前スカンジナビアに移住し、独自の文化を形成していったと言われています。
そのサーミの存在が、最近になって多くの人に知られるようになりました。
きっかけとなったのは、2013年に公開し大ヒットした、ディズニー映画「アナと雪の女王」。
物語に出てくるクリストフはサーミ人がモデルになっており、サーミの土地が舞台となって出てくるシーンもあります。
また、オープニングの美しく印象的なコーラス曲は、サーミ語で“歌”を意味する“ヨイク”からインスピレーションを受けた楽曲と言われています。ヨイクのメロディーを聴くと、自然と澄んだ空気と真っ白な雪の大地が目に浮かんでくるようです。
サーミとはサーミ語で「人」の意味を持つのですが、彼らはそれぞれの地域で異なったサーミ語を使います。
サーミたちは昔から、狩猟、遊牧、トナカイ飼育、鮭漁、小規模農業に従事してきましたが、現在は環境変化によって、遊牧から定住となったり、近代化が進み伝統的なソリの代わりにスノーモービルが使われたり、国の抑圧から文化が途絶えてしまったりと大きく変化しています。
現在、フィンランドには約5,000人のサーミが暮らしていますが、一体どんな生活をしているのでしょうか。
私が向かったのは、ヘルシンキから飛行機で1時間40分北へ行った、“イナリ”という町。
全長100kmもある大きな湖、“イナリ湖”の名前からきています。この街には、“イナリ・サーミ”がたくさん暮らしています。
今回訪問したアイキオ一家は、昔ながらのトナカイ飼育や伝統的な漁を行っている、今となっては貴重なサーミです。現在、トナカイ飼育に関わるサーミは全体の約10%と言われるほど減少しています。
家族は全部で9人。
7人の娘たちと、イナリで最後の漁師と言われているお父さんのヨウニさん。そして、看護婦さんでもある奥さんのマリアンネさんです。
先住民族と聞くと、原始的な生活をイメージする方も多いのではないでしょうか。
しかし、彼らの生活は近代的で、物質面ではほとんど南フィンランド人と同じ生活をしています。違うことといえば、家の周辺が大きな森と湖に囲まれ、トナカイが歩き回っていること、また自然を軸とした生活が営まれていることでしょう。
漁やトナカイの仕事に従事する彼らの生活は、自然環境に大きく左右されます。
漁に出るのもその日の天候次第で、予定を立ててもその通りにいかないこともたくさんあります。
便利になった私たちの普段の生活は、道具や発展した仕組みによって、環境を自分に適したものに変えてしまうことができます。
しかしここでは、環境の変化や起こる出来事に対して、自分を変えていく勇気を持って生きていくことが求められます。その習慣は、自分勝手に生きていくということではなく、共存していくことの大切さを教えてくれます。
アイキオ一家はスーパーで食料を調達もしますが、食卓に並ぶのは、主にヨウニさんが獲った魚やさばいたトナカイなどです。
トナカイ肉は野菜などと煮込んで、スープにして食べます。多少臭みがありますが、独特な旨味があってやみつきになります。
イナリ湖で獲れる“シーカ”(シナノユキノマス)と呼ばれる白身魚は、炭火でしっかり焼いて食べます。
「魚は手で食べるのが一番おいしいのよ」
その土地の人びとにとって特に親しまれている食べ物を手で食べるのは、万国共通のようです。
最後にサーミに会ったら、聞きたくても聞いてはいけないことを皆さんにこっそり教えましょう。
それは、“所有しているトナカイの数”です。
これは、サーミにとって預金通帳の金額を聞かれることと一緒なので、聞きたくてもぐっとこらえましょうね!
次回からは、アルゼンチン編をお届けします。
ERIKO(エリコ)
モデル・定住旅行家
鳥取県出身。東京コレクションでモデルデビュー。高校在学中、語学留学のためイギリス、アメリカ合衆国に滞在。高校卒業後、イタリア、アルゼンチン、ロシア、インドで語学習得のための長期滞在をきっかけに、様々な土地に生きる人達の生き方や生活を体感することに興味を抱き、スペイン語留学で訪れたアルゼンチンでの生活をきっかけに、ラテンの地と日本の架け橋になるという目的を持って、2012年から1年4ヶ月をかけて中南米・カリブ25ヶ国を旅する。現在モデルと並行し、「定住旅行家」として、世界の様々地域で、現地の人々の家庭で暮らすように旅を続け、人々の生活や生き方を伝えている。NEPOEHT所属(モデル)であり、雑誌、CM、企業講演、トークイベント、国内外TV、ラジオなどメディア出演多数。著書に「暮らす旅びと」(かまくら春秋社)。また、内閣府平成28年青年国際交流事業の効果検証に関する検討会委員。観光庁「若旅★授業」講師。とっとりふるさと大使。米子市観光大使。国際協力機構JICA「なんとかしなきゃ!プロジェクト」著名人メンバーなども勤める。

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